第1問(民法)— 後順位抵当権者と消滅時効の援用

問: 被担保債権が時効により消滅したことを理由として抵当権の消滅を主張するため、当該被担保債権の消滅時効を援用することができる者として、判例上認められないのは次のうちどれか。

(ア)抵当不動産の第三取得者 (イ)物上保証人 (ウ)後順位抵当権者 (エ)抵当権設定者の保証人

答: (ウ)

解説:

  • 民法145条括弧書は、消滅時効の援用権者として「保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者」を例示する。
  • 後順位抵当権者については、**最判平成11年10月21日(民集53巻7号1190頁)**が「先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することはできない」と判示した。後順位抵当権者は、先順位抵当権の消滅により配当額が増えるという反射的利益を受けるにすぎず、「権利の消滅について正当な利益を有する者」に該当しないとされる。
  • 第三取得者については最判昭和48年12月14日が、自己所有不動産の負担を免れる利益を有するとして援用権を肯定する。保証人については民法145条括弧書きが直接根拠となる。

第2問(不動産登記法)— 仮登記に基づく本登記と利害関係人

問: 所有権移転請求権仮登記に基づく本登記の申請をする場合、登記上の利害関係を有する第三者の承諾を証する情報の提供が必要となる(不動産登記法109条1項)。次の登記名義人のうち、当該「登記上の利害関係を有する第三者」に該当しないものはどれか。

(ア)当該仮登記より後に登記された所有権移転登記の名義人 (イ)当該仮登記より後に登記された抵当権設定登記の名義人 (ウ)当該仮登記より後に登記された差押えの登記の名義人 (エ)当該仮登記より前に登記された所有権移転登記の名義人

答: (エ)

解説:

  • 不動産登記法109条1項は、所有権に関する仮登記に基づく本登記には、登記上の利害関係を有する第三者の承諾が必要とする。
  • 「登記上の利害関係を有する第三者」とは、本登記によって登記上不利益を受けることが登記簿の記録から客観的に認められる第三者をいう(先例・登記実務の確立した解釈)。
  • 仮登記よりにされた所有権移転、用益権・担保権の設定、処分制限の登記の名義人がこれに当たり、本登記がされると登記官の職権で抹消される(不動産登記法109条2項)。
  • 仮登記よりにされた登記の名義人は、本登記によって自らの権利が登記上覆滅されることはないため、利害関係人ではない。

第3問(会社法・商業登記法)— 監査等委員会設置会社の取締役の任期

問: 監査等委員会設置会社における取締役の任期に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(ア)監査等委員である取締役の任期は、定款の定めにより1年に短縮することができる。 (イ)監査等委員である取締役以外の取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までである。 (ウ)監査等委員である取締役の任期は、株主総会の決議によって短縮することができる。 (エ)監査等委員である取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までであり、定款または株主総会の決議によって短縮することはできない。

答: (エ)

解説:

  • 会社法332条4項:監査等委員である取締役の任期は選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされ、同条1項ただし書(定款・株主総会決議による短縮)は適用されない。これは監査等委員の独立性確保のための強行規定である。
  • 監査等委員以外の取締役の任期は会社法332条3項により1年(選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで)。よって(イ)は誤り。
  • 監査等委員である取締役を任期途中で解任するには、株主総会の特別決議が必要(会社法309条2項7号、344条の2第3項)。普通決議で足りる通常の取締役解任とは扱いが異なる点に注意。

第4問(民事訴訟法)— 補助参加と訴訟告知

問: 補助参加および訴訟告知に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(ア)補助参加の申出は、事実審の口頭弁論終結時までにしなければならず、上告審においてはすることができない。 (イ)補助参加について当事者の異議があったときは、裁判所は、補助参加人に補助参加の理由を疎明させ、決定で、その許否について裁判する。 (ウ)訴訟告知は、口頭によりすることができる。 (エ)訴訟告知を受けた者が訴訟に参加しなかった場合、参加的効力(民事訴訟法46条)はその者には及ばない。

答: (イ)

解説:

  • ア:誤り。補助参加は「訴訟係属中」であれば足り、上告審においてもすることができる(民事訴訟法42条)。
  • イ:正しい。民事訴訟法44条1項そのもの。異議があれば裁判所は決定で許否を判断する。
  • ウ:誤り。民事訴訟法53条3項:「訴訟告知は、その理由及び訴訟の程度を記載した書面を裁判所に提出してしなければならない」。書面によることが必要である。
  • エ:誤り。民事訴訟法53条4項:訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合においても、参加することができた時に参加したものとみなして参加的効力(46条)が及ぶ。これが訴訟告知の最大の効果である。

第5問(民法・供託法)— 弁済供託

問: 弁済供託に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(ア)金銭債務の弁済供託は、原則として債権者の現在の住所地の供託所にしなければならない。 (イ)債権者が供託を受諾せず、かつ、供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は供託物を取り戻すことができる。 (ウ)供託物の取戻しがされた場合、供託は初めから存在しなかったものとみなされる。 (エ)債権者を確知することができないことについて弁済者に過失がある場合でも、債権者不確知を理由とする弁済供託をすることができる。

答: (エ)

解説:

  • ア:正しい。金銭債務は持参債務が原則であり、特別の意思表示がないときは債権者の現在の住所が履行地となる(民法484条1項)。弁済供託は「債務の履行地の供託所」にする(民法495条1項)ため、結果として債権者の現在の住所地の供託所となる。
  • イ:正しい。民法496条1項本文
  • ウ:正しい。民法496条1項後段:「この場合においては、供託は、初めからなかったものとみなす」。
  • エ:誤り。民法494条2項ただし書:「弁済者が債権者を確知することができないときは、弁済者は、供託をすることができる。ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない」。過失があれば債権者不確知供託は認められない。

出題分野

科目 中心論点
第1問 民法 消滅時効の援用権者・後順位抵当権者の不可(最判平11.10.21)
第2問 不動産登記法 仮登記に基づく本登記の利害関係人(不登法109条)
第3問 会社法・商業登記法 監査等委員会設置会社の取締役任期(会社法332条3項・4項)
第4問 民事訴訟法 補助参加と訴訟告知の参加的効力(民訴42・44・53条)
第5問 民法・供託法 弁済供託の要件と取戻し(民法494条・495条・496条)