第1問(民法)— 即時取得と盗品・遺失物の回復請求
問:Aの所有する動産甲をBが占有していたところ、CがBから甲を平穏かつ公然に譲り受け、Bが無権利者であることをCは過失なく知らなかった。Cが甲の占有を取得した場合、Cは即時取得により甲の所有権を取得する。もっとも、甲が盗品又は遺失物であった場合には、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年以内に限り、Cに対してその物の回復を請求することができる。
答:○
解説:民法192条は、取引行為によって平穏かつ公然に動産の占有を始めた者が、善意かつ無過失であるときは、その動産について行使する権利を即時に取得すると定める。即時取得の成立要件は、①占有者の前主が無権利者(または無権限者)であること、②売買・贈与等の取引行為によること、③平穏・公然・善意・無過失で占有を始めたこと、④動産(金銭・登録された動産を除く)であることである。
もっとも、当該動産が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対して回復請求ができる(193条)。さらに194条は、即時取得者が盗品等を競売若しくは公の市場で買い受け、又は同種の物を販売する商人から善意で買い受けた場合は、被害者等は代価を弁償しなければ回復できないと定める。回復請求権が時間制限付きである点と、代価弁償の例外がある点をセットで押さえる。
第2問(不動産登記法)— 所有権更正登記と利害関係人の承諾
問:A単有名義の所有権の登記を、AB共有名義に更正する所有権の更正登記を申請する場合において、Aの所有権を目的としてCのために抵当権が設定されているときは、Cの承諾を証する情報(又は承諾に代わるべき裁判があったことを証する情報)の提供がなければ、付記登記により更正登記をすることはできない。
答:○
解説:所有権の更正登記は、付記登記により行うのが原則である(不動産登記規則3条2号)。本問のように、A単有→AB共有の更正登記がされると、Aの持分に対応する抵当権の効力範囲が縮小し、Cの担保価値は実質的に減少する関係に立つ。このため、Cは登記上の利害関係を有する第三者にあたり、その承諾を証する情報又は承諾に代わるべき裁判があったことを証する情報の提供がなければ、付記登記によって更正登記をすることはできない(不動産登記法66条)。
利害関係人の承諾を得て付記登記によって更正登記をする方式が原則であり、登記実務上は承諾を得られない場合の更正登記は受理されない取扱いになっている点を理解しておくこと。
第3問(会社法・商業登記法)— 種類株式発行会社の登記事項
問:種類株式発行会社の登記事項には、(1)発行可能種類株式総数、(2)発行する各種類の株式の内容のほか、(3)発行済株式の総数並びにその種類及び種類ごとの数も含まれる。
答:○
解説:会社法911条3項7号は、種類株式発行会社の登記事項として「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容」を定める。同項9号は「発行済株式の総数並びにその種類及び種類ごとの数」を登記事項として規定している。
種類株式の内容(議決権制限、譲渡制限、取得請求権、取得条項、全部取得条項、拒否権、役員選任権など、会社法108条1項各号)も、その内容に応じて具体的に登記される。新株発行・株式併合・株式分割等が行われるたびに、発行済株式の種類ごとの数を更新する登記が必要である点も、商業登記法を学ぶうえで重要な実務感覚として押さえておきたい。
第4問(民事訴訟法)— 処分権主義と一部認容判決
問:原告が被告に対して500万円の支払を求める給付の訴えを提起した場合、裁判所は、原告の主張する事実が認められる範囲で、500万円以下の金額の支払を命じる判決(一部認容判決)をすることができる。
答:○
解説:民事訴訟法246条は「裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。」と定め、処分権主義を明文化している。これにより、原告が500万円を求めているのに700万円の支払を命じることはできない(量的上限)。しかし、500万円以下の金額(例えば400万円)の支払を命じる判決は、申立額の範囲内であり、量的一部認容として可能である。
処分権主義は「申立事項(請求の趣旨)」に関する制約であり、原告の主張する事実関係(請求原因事実)の枠を超えるかは「弁論主義」の問題である(両原則の役割分担を整理しておくこと)。
第5問(民事執行法・供託法)— 執行供託の権利供託と義務供託
問:金銭債権について差押えがされた場合、第三債務者は、必ずその債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託しなければならない。
答:×
解説:民事執行法156条1項は「第三債務者は、差押えに係る金銭債権(差押命令により差し押さえられた部分に限る。)の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる。」と定め、これは権利供託であって義務ではない。
これに対し、同条2項は、配当要求があったとき、又は差押え・仮差押えの競合があったときは、第三債務者は同条1項と同様の供託を「しなければならない」と義務供託を定めている。本問は、差押え一般について常に義務供託となるかのように記述した点で誤りである。
権利供託にとどまる場面では、第三債務者は供託をしなくても差押債権者に弁済すれば免責される(ただし二重弁済リスクは残る)。差押えの競合等が発生したときに初めて義務供託となる、という整理を試験対策として徹底しておきたい。
出題分野の振り分け
| 問 | 科目 | 論点 |
|---|---|---|
| 第1問 | 民法 | 即時取得(192条)と盗品・遺失物の回復請求(193条・194条) |
| 第2問 | 不動産登記法 | 所有権更正登記の付記登記性と利害関係人の承諾(66条・規則3条2号) |
| 第3問 | 会社法・商業登記法 | 種類株式発行会社の登記事項(会社法911条3項7号・9号) |
| 第4問 | 民事訴訟法 | 処分権主義と一部認容判決(246条) |
| 第5問 | 民事執行法・供託法 | 執行供託の権利供託と義務供託(民事執行法156条) |