第1問 不動産登記法(表示)— 建物の合体による登記等
問: 同一の所有者に属する建物Aと建物Bが、増築工事により物理的に接合し、構造上・利用上一体となって1個の建物となった場合、表示に関する登記としてどのような申請をすべきか。当該申請の名称、申請義務の発生時期、添付情報の概要について答えよ。
答: 「建物の合体による登記等」を1か月以内に申請しなければならない(不動産登記法49条1項柱書、同条1項各号)。具体的には、合体前の各建物に係る登記を閉鎖するとともに、合体後の建物について新たに表題登記をする(同条1項1号)。所有権の登記がある建物どうしの合体の場合は、合体後の建物について所有権の登記もあわせて申請する(同条1項3号)。添付情報として、建物図面・各階平面図、所在図、所有権を証する情報、合体に至る経緯を明らかにする情報等が必要となる(不動産登記令別表13項、不動産登記規則84条)。
解説: 建物の合体は、合筆(土地)に対応する物理的一体化の概念であり、本試験表題部分野の難所論点である。中級者は、「合体」「合併」「附属建物の新築」の3類型を区別する必要がある。
用語の整理
| 用語 | 物理的一体化 | 登記簿上の処理 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 合体 | あり(壁の除去等で構造上一体) | 合体後の建物として新登記、合体前各建物の登記を閉鎖 | 不登法49条 |
| 合併 | なし(独立の建物のまま) | 1個の登記記録に統合(主+附属関係) | 不登法54条1項3号 |
| 附属建物の新築 | なし(独立の新築建物が附属) | 主たる建物の表題部に附属建物として記載 | 不登法51条 |
合体の要件
建物の合体には、構造上の一体性(隔壁の除去等)と利用上の一体性が必要である。単に廊下で接続されただけでは合体に当たらず、附属建物として処理される(不動産登記事務取扱手続準則80条参照)。
1か月以内の申請義務
不動産登記法49条1項は「合体による登記等を申請しなければならない」と定め、表題登記がない建物について同法47条1項が定める1か月の申請義務と同趣旨の期間制限を置く(49条1項柱書)。違反には10万円以下の過料の制裁がある(同法164条1項)。
所有権の登記がある建物どうしの合体(49条1項3号)
合体前の建物Aに所有権の登記がある場合、合体後の建物について新たな表題登記をすると同時に、合体前のA建物の所有権登記名義人を、合体後の建物の所有権登記名義人として登記する(同号)。合体前の登記記録は閉鎖される。
抵当権等の処理(49条2項)
合体前の建物に所有権以外の権利(抵当権等)の登記があるときは、当該権利の合体後の建物への持分(合体前の各建物の床面積の割合等)を計算して、合体後の建物について各権利の登記をする(49条2項、不動産登記規則120条参照)。
誤肢の典型:①「合体は合併と同一概念である」(誤り、上表のとおり別概念)、②「合体は申請任意」(誤り、49条1項柱書で申請義務)、③「所有者が異なる建物どうしも合体できる」(49条1項各号は所有者が同一であることを前提とする整理)。中級者は、合体の表題登記+所有権登記の同時申請(49条1項3号)の手続を、申請書様式と添付情報まで踏まえて整理したい。
第2問 土地家屋調査士法 — 懲戒処分の種類と処分権者
問: 土地家屋調査士に対する懲戒処分の種類、処分権者、及び懲戒事由が認められる場合に経るべき手続について答えよ。
答: 土地家屋調査士法42条により、懲戒処分は次の3種類:①戒告、②2年以内の業務の停止、③業務の禁止。処分権者は法務大臣(同法42条柱書)。懲戒事由が認められる場合、何人も法務大臣に対し懲戒事由を告発する書面を提出することができ(同法44条1項)、法務大臣はこれを受けて必要な調査を行う(同条2項)。法務大臣は処分前に、当該調査士に弁明の機会を付与し(行政手続法13条1項2号、調査士法46条)、また日本土地家屋調査士会連合会に通知する(同法48条)。
解説: 調査士法42条以下の懲戒関連規定は、調査士業務の公益性に裏打ちされた行政処分制度であり、中級者は処分の種類・権者・手続を一体で押さえる必要がある。
懲戒処分の3種類(42条)
| 処分 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 戒告 | 文書による戒め | 業務継続可能。次回懲戒の加重事由となり得る |
| 業務停止 | 2年以内の期間を定めて停止 | 停止期間中は調査士業務を行えない(57条業務制限違反の罪) |
| 業務禁止 | 業務の永久的禁止 | 調査士登録の取消事由(15条1項3号)。再登録には欠格期間経過要 |
処分権者
法務大臣(42条柱書)。司法書士法における司法書士の懲戒処分(司書法47条以下、同様に法務大臣)と同じ構造。なお、令和元年改正で日本司法書士会連合会・日本土地家屋調査士会連合会の機能強化が図られたが、懲戒処分権限は法務大臣に残されている。
手続の概要
- 告発:何人でも、調査士に懲戒事由があると認めるときは、その事由を法務大臣に告発できる(44条1項)
- 調査:法務大臣は告発を受けたとき、または職権で、必要な調査を行う(44条2項)
- 聴聞・弁明:処分の重大性に応じ、聴聞(行政手続法13条1項1号、業務禁止)または弁明の機会の付与(同項2号、戒告・業務停止)を行う
- 処分・告示:処分内容は官報で告示される(48条)
懲戒事由(42条柱書)
「この法律若しくはこの法律に基づく命令に違反したとき、又はこの法律若しくはこの法律に基づく命令に違反する行為があつたとき」が懲戒事由となる。具体的には、業務禁止違反(22条の2)、秘密保持義務違反(24条の2)、報酬規程違反、虚偽の登記情報提供、業務外で社会的信用を失墜させる行為等が含まれる。
懲戒と登録取消しの関係
業務禁止処分を受けると、登録取消事由となる(調査士法15条1項3号)。再登録は、業務禁止の処分を受けて2年を経過しないと不可(同法5条2号)。
誤肢の典型:①「懲戒処分は司法書士会連合会が行う」(誤り、法務大臣)、②「業務停止は5年以内」(誤り、2年以内)、③「戒告は懲戒処分に含まれない」(誤り、3種類の最も軽い処分として明文)。中級者は、調査士法5条(欠格事由)、15条(登録取消し)、22条の2(業務禁止事件)、44条(告発)、48条(処分の告示)の連関を体系的に押さえたい。
第3問 民法相隣関係 — 改正民法233条(越境した枝の切取り)
問: Aの所有する土地に、隣地B所有地の竹木の枝が境界線を越えて伸びてきている。Aが当該枝を自ら切除できるのは、改正後の民法上、どのような場合か。手続要件と例外を含めて答えよ。
答: 令和3年改正・令和5年4月1日施行の民法233条1項の原則は、土地所有者は竹木の所有者に対し、その枝を切除させることができる(請求権)。改正により新設された同条3項は、次のいずれかに該当する場合、土地所有者が自ら枝を切り取ることができると定める:
- 第1号:竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、相当の期間内に切除しないとき
- 第2号:竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき
- 第3号:急迫の事情があるとき
また、共有竹木の場合は、各共有者が枝を切り取ることができる(同条2項)。根の越境については、改正前から土地所有者が自ら切除できる扱いに変更はない(同条4項)。
解説: 改正前民法233条は、隣地から越境した枝の切除につき「竹木の所有者に切除を求めることができる」(原則)としていたところ、所有者が応じない場合は判決を得て強制執行に至る必要があり、迂遠であった。所有者不明・所在不明の事案にも対応できなかった。
令和3年改正は、所有者不明土地問題への対応とも連動し、土地所有者の自力救済的処理を3類型で許容した。
改正後民法233条の構造
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 1項 | 原則:竹木の所有者に枝の切除を請求できる(請求権) |
| 2項 | 共有竹木の場合:各共有者が枝を切り取れる |
| 3項 | 自己切取りができる例外3類型(1〜3号) |
| 4項 | 根は土地所有者が自ら切除できる(改正前と同じ) |
3項各号の運用ポイント
- 1号(催告後相当期間経過):催告は内容証明郵便等の確実な方法が望ましい。「相当の期間」は枝の状態・季節等を考慮した社会通念上相当な期間(数週間〜2か月程度が目安)
- 2号(所有者不明・所在不明):相続発生で相続人が確定しない場合、登記名義人と現況利用者が異なる場合等。調査の方法(不動産登記簿、戸籍、住民票等)の合理性が問われる
- 3号(急迫):枝が破損して落下しそう、強風で折れる等、緊急に切除しなければ損害が生じる事案
償金の問題
3項に基づき土地所有者が自ら切り取った場合、切取り費用を竹木所有者に対し求償できるかは解釈問題。費用償還請求権を認める方向(民法第3章不当利得・事務管理の準用等)が有力解釈とされる。
根の越境(4項)
根については、改正前から土地所有者が自ら切除できる扱い(旧233条2項、現行233条4項)。枝と根の取扱いの非対称性は、ローマ法以来の伝統に由来し、改正後も維持された。
調査士業務との接点
筆界調査・現況測量で隣地の越境枝・越境根を発見した場合、土地所有者への助言として本条を念頭に置くべき。境界標の埋設・修復作業に支障を来す枝の切除も、本条の範疇で処理し得る。
誤肢の典型:①「催告なしで自由に切れる」(誤り、3項各号いずれかの要件必要)、②「所在不明であっても判決を得てから切除すべき」(誤り、3項2号により自己切取り可)、③「根も枝と同様に催告が必要」(誤り、4項により根は自由に切除可)。
第4問 測量計算 — 三斜法による面積計算(電卓不可)
問: 三角形の各辺の長さが a = 6 m、b = 8 m、c = 10 m であるとき、当該三角形の面積を、三斜法(ヘロンの公式)を用いて求めよ(電卓不可)。検算として、当該三角形の形状を別の方法で確認せよ。
答: 24.00 ㎡
解説: 三斜法による面積計算は、土地家屋調査士試験の測量計算で頻出の基本論点である。中級者は、ヘロンの公式の適用と検算手段を併せて押さえる必要がある。
ヘロンの公式
$$S = \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)} \quad \text{ただし} \quad s = \frac{a+b+c}{2}$$
本問の値を代入する:
$$s = \frac{6 + 8 + 10}{2} = \frac{24}{2} = 12$$
$$s - a = 12 - 6 = 6$$ $$s - b = 12 - 8 = 4$$ $$s - c = 12 - 10 = 2$$
$$S = \sqrt{12 \times 6 \times 4 \times 2} = \sqrt{576} = 24$$
よって、S = 24.00 ㎡
【検算】ピタゴラスの定理による直角三角形判定
a = 6、b = 8、c = 10 について、$a^2 + b^2 = c^2$ が成立するか確認する。
$$a^2 + b^2 = 6^2 + 8^2 = 36 + 64 = 100 = 10^2 = c^2$$
成立する。よって本三角形は、辺長 6・8 を直角を挟む2辺、辺長 10 を斜辺とする直角三角形である。直角三角形の面積は次式で簡便に求められる:
$$S = \frac{1}{2} \times 6 \times 8 = \frac{48}{2} = 24$$
ヘロンの公式の結果と一致。S = 24.00 ㎡
中級者が押さえるべき関連論点
- 三斜法と座標法の使い分け:三斜法は辺長が分かっている場合に使用、座標法は座標値が分かっている場合に使用。地積測量図には座標値の記載が必須となっている(不動産登記規則77条1項8号)ため、近年は座標法が主流
- 3:4:5 の直角三角形:ピタゴラス数の最小組(3-4-5、6-8-10、9-12-15…)は試験頻出。電卓不可の試験では、これらに気づくと検算が一気に楽になる
- ヘロンの公式の数値処理:根号内が大きな値になることが多いので、平方因子を取り出して整理する習慣をつけると速い(例:$\sqrt{576} = \sqrt{2^6 \times 3^2} = 8 \times 3 = 24$)
誤肢の典型:①「三斜法は座標法に劣り、地積測量図に使用できない」(誤り、辺長による求積も認められる)、②「ヘロンの公式の s は 3辺の合計(a+b+c)」(誤り、半周長 (a+b+c)/2)、③「直角三角形でないと三斜法は使えない」(誤り、任意の三角形に適用可)。
第5問 作図書式 — 各階平面図の記載事項
問: 建物の表題登記の申請に伴って提出する各階平面図に記載しなければならない事項として誤っているものを、次のうちから一つ選べ。
① 各階の別
② 各階の平面の形状
③ 一階の位置
④ 各階ごとの建物の床面積及びその求積方法
⑤ 当該建物の所有権の登記名義人の住所及び氏名
答: ⑤が誤り。各階平面図に所有権の登記名義人の住所・氏名を記載する規定はない。
解説: 各階平面図の記載事項は、不動産登記規則83条に列挙されており、本試験書式問題の頻出減点ポイントである。中級者は、地積測量図(規則77条)・建物図面(規則82条)・各階平面図(規則83条)の3図面の記載事項を完全に区別して記憶する必要がある。
不動産登記規則83条が定める各階平面図の記載事項
| 号 | 記載事項 |
|---|---|
| 1号 | 縮尺 |
| 2号 | 各階の別 |
| 3号 | 各階の平面の形状 |
| 4号 | 一階の位置 |
| 5号 | 各階ごとの建物の周囲の長さ |
| 6号 | 床面積及びその求積方法 |
| 7号 | 附属建物があるときは、主である建物又は附属建物の別及び附属建物の符号 |
「周囲の長さ」記載の重要性
各階平面図には、各階の床面積だけでなく、各階ごとの建物の周囲の長さを記載することが規則83条1項5号で要求されている。これは試験書式問題で記載漏れが目立つ典型ポイントの一つで、面積記載のみで満足しがちな受験生が減点される代表例である。求積方法(三斜法・座標法)と併せて、周囲長を必ず記載する。
各階平面図は250分の1の縮尺で作成する(規則83条2項)。
所有権の登記名義人の住所・氏名は、各階平面図の記載事項として規定されていない(申請情報側の所有者氏名・住所欄に記載される)。各階平面図の作成者(土地家屋調査士)は、職氏名・職印で表示される。
建物図面(規則82条)との区別
建物図面(規則82条)と各階平面図(規則83条)は別条で別図面として定められている。建物図面は敷地内の建物の位置関係を示す図面、各階平面図は建物の各階の平面の形状を示す図面である。
| 図面の種類 | 主な記載事項 | 縮尺の目安 |
|---|---|---|
| 建物図面 | 建物の位置(敷地境界からの距離)、敷地の形状、敷地の地番、附属建物の位置等 | 500分の1 |
| 各階平面図 | 各階の別、平面の形状、一階の位置、床面積、求積方法 | 250分の1 |
地積測量図(規則77条)との比較
地積測量図(土地)と各階平面図(建物)は対応する図面であるが、記載事項は異なる。地積測量図には平面直角座標系の番号、筆界点の座標値、境界標、測量年月日等が記載されるのに対し、各階平面図にはこれらの座標系・境界・測量関連の記載は要求されない(建物の平面形状を示す図面の性質上、当然の差異)。
求積方法の記載
各階平面図の床面積算定(6号)は、原則として壁の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による(不動産登記規則115条)。求積方法は三斜法・座標法等の選択を明示する必要がある。
誤肢の典型:①「縮尺は不要」(誤り、規則83条1項1号で必須)、②「周囲の長さは不要」(誤り、規則83条1項5号で必須・本問の最頻出引っかけ)、③「測量年月日が必要」(誤り、各階平面図には不要、地積測量図には必要)。
中級者は、表題登記の申請書(不動産登記令3条8号、同9号)、添付図面の縦横の規格、図面の作成者の表示まで一体で押さえたい。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主要論点 | 主な根拠 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 不動産登記法(表示) | 建物の合体による登記等 | 不動産登記法49条1項各号・2項、164条 |
| 第2問 | 土地家屋調査士法 | 懲戒処分の種類と処分権者 | 調査士法42条、44条、48条 |
| 第3問 | 民法相隣関係 | 改正民法233条 越境した枝 | 民法233条1〜4項(令和3年改正) |
| 第4問 | 測量計算 | 三斜法による面積計算 | ヘロンの公式 |
| 第5問 | 作図書式 | 各階平面図の記載事項 | 不動産登記規則83条1項各号 |